IT企業広報として働く二児の母

IT企業の事業広報として働くアラフォー会社員。単角子宮による切迫流産・切迫早産を乗り越え、無事二児の母となりました。単角子宮での妊娠・切迫流産や切迫早産・帝王切開の経験、育児と仕事の両立、読んだ本などいろいろ書いていきます。

「ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい」内容と感想---子供に寄り添い可能性を伸ばすことについて考えた

「ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい」。

2歳でアスペルガー症候群(高機能自閉症)と診断されながら、IQ170の頭脳をもち、9歳で大学生となった天才宇宙物理学者の少年、ジェイコブ・バーネットくんの軌跡を、母親であるクリスティン・バーネットさんが書き綴った本です。

彼が2歳で自閉症と診断されて、話すことや靴紐を結ぶこともできないだろうと言われながら、保育士でもある母親は、彼の可能性を諦めずに試行錯誤し、彼の数学や物理学への興味と才能を見出し、そして10歳で宇宙物理学者として大学で研究を始めるまでが綴られています。

だってこの子、IQ170とか!!想像もつかないような天才児でしょ?というふうに穿った見方で読んでいたのですが(!)、クリスティンさんの取り組みには育児での共通でのヒントがあったように思ったので、そのあたりを書いていきます。

※長いので、育児のヒントという点では、「母親がジェイクに行った4つのこと」「この本を読んで思ったこと」をご覧ください

 

 

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本の内容

本は、冒頭に書いたとおり、母親であるクリスティンさんが、ジェイク(本文中でのジェイコブくんの愛称です)が自閉症と診断されながらもわずか9歳で大学に入り、研究者としての第一歩を踏み出すまでを克明に描いています。

時折、クリスティンさん自身の生い立ちにも触れられ、彼女自身が地域コミュニティや家族に愛されて自分を尊重されて育ってきたこと、保育士としての自らも、同じように子どもたちを尊重し、信用し、可能性を伸ばそうと奮闘していることを書いています。

 

あらすじ

クリスティンとジェイクの歩みを簡単に書くと、こんな感じです。

  • 2歳で自閉症と診断。読み書きや会話はできないだろうと告げられるが、クリスティンはジェイクが言語に興味を持っていると感じ、特別支援プログラムをやめさせ、自らの保育園で、他の自閉症児たちと一緒に、通常の幼稚園に入れるように独自の教育を始める。
  • 努力の甲斐あり、ジェイクを始め子どもたちは通常の幼稚園へ進学するが、ジェイクが普通の子よりかなり知能が高いことが徐々に判明する。
  • 高すぎる知能のために幼稚園・小学校での生活に退屈し再び殻に閉じこもり始めたジェイクを危惧し、ジェイクが好きな宇宙に関する大学の公開講座に連れて行く。それをきっかけにジェイクの数学や物理学の才能が目覚める。
  • 懇意にしている教授のすすめで大学に進学することを決意。自閉症に対する偏見のため入学手続きは難航するが、わずか9歳で見事大学に進学。
  • ジェイクの生い立ちが地元のメディアに注目され、一躍時の人となる。そして、大学での研究が実を結び、初の論文を世に出し、研究者として歩み始める。

 

ところでジェイクってどんな少年なの?(TED講演の動画) 

ジェイクは2012年、ティーン向けTEDのイベントでプレゼンをしています。

「学ぶことをやめよう、学ぶ代わりに自らで考え、創造していこう」というメッセージを同世代に送っています。

講演の書き起こし

logmi.jp

 日本語字幕付きのTED講演動画。

将来言葉が話せないだろうと診断されただなんてとても思えない!!

日本語TED新着: 知ってることなんて忘れよう | ジェイコブ・バーネット | TEDxTeen

 

 

信念のど根性スーパーマザー、クリスティン 

ざっと書くと、「フーン」という感じかもしれませんが、正直、クリスティンさん、スーパーマザーです。

苦境とそれを乗り越える根性が半端じゃありません。

 

まず、自身のお子さんの育児にかなり苦労されていること。

一人目のジェイクが自閉症と診断されたのみならず、二人目のウェズリーは筋肉の病気で生まれた当初は授乳や食事にも介護が必要でした。歩くことができるようになったのは三歳(でもそれ以降は順調に育ち、スポーツに親しむ活発な少年として育ちます)。

保育士の仕事に産後1週間程度で復帰し、フルタイムで保育所を運営しながら、ジェイクの支援プログラムやウェズリーの介護に奮闘するのです。

 

その中で、数々のアクシデントに見舞われます。

まずは自身の持病。30代にして脳卒中に倒れ、しばらく半身不随となります。若くして脳卒中に至った原因は自らが自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス)にかかっているため、と知るのです。

 

さらに、リーマン・ショックの直撃。彼女は、ジェイクやその仲間、その家族が安心して楽しく過ごせるコミュニティを作るため、保育園のみならず、支援センターを自ら設立しようとします。なけなしの財産をはたいて土地と建物を購入したところで襲うリーマン・ショック…

支援センターのプロジェクトは当然ストップ。それどころか夫が失業し、冬を過ごすのもやっとという壮絶な貧困を体験します。
(暖房も入れられず食事にも困る描写が出てきます。当時のインディアナ州の労働者層では珍しくないことだったようで、今さらながらアメリカでのリーマン・ショック不況の凄さに目を覆いたくなります…)

 

息子さんが自閉症だったり要介護というだけでも大変なのに、これでもかこれでもかとやってくるアクシデント。根性根性ど根性。おしんさながらの昭和のど根性ストーリーを読んでいるような強烈な人生なのです。

キラキラバリバリワーキングマザーの逸話を読んで、「うわ…すごいけどここまでやるのは無理…」って思ってしまうように、誰もが簡単になれるようなものではないです正直。


でも、彼女が子どもたちのために傾ける情熱の強さに、少しでもその考え方を取り入れられたらと思わされました。

 

母親がジェイクに行った4つのこと

1.子供が興味を持っているものごとに気づき、それを深め広げられる環境を与える

クリスティンが素晴らしいところの一つは、子どもをよく観察し、その子が好きで興味を持っているものを見つけ、それを深め広げるものを提示してあげるというところです。それはジェイクに対してだけではなく、保育所や支援センターの子供たちに対しても同じ。

 

ジェイクについては、幼い頃から図形やパズルが好きなことから数学に興味を持っていること、また好んで読む本から物理学や宇宙に興味を持っていることを知り、そのために本や大学の公開講座などさまざまな環境を与えます。

その他の子どもも、例えば電気部品をいじるのが好きな子には機械や工具を与えて電気工学の道へ、お絵描きが好きな子には画材をふんだんに与えてアーティストに、そして重度の自閉症で就労が難しいと言われていた、甘いものが大好きで創作に興味を示した少女には、ケーキのデコレーションを通じてなんとケーキ屋さんへの就職の道を開いてしまうのです。

 

自分は娘の好きなものをちゃんと理解してるかな、それを伸ばすために何をしてあげられてるかな、と考えてしまいました。

娘は歌やお絵描きかな…。保育園の延長保育の自由時間でも、家でも毎日のように歌やお絵描きをしています。

※自作絵本?作成中の娘

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2.今ある環境が子供のためになっているかを注視し、必要であれば勇気を持って環境を変えたこと

ジェイクの可能性を絶望視している特別支援プログラムから離脱し自らで教育することを決断したり、知能が高すぎるジェイクには退屈すぎる小学校を中退させ、大学へさせるなど、それが例え「一般的な」「正しい」道だとされていたものでも、ジェイクにとってマイナスなものについては、勇気を持って道を変える決断をします。

 

これ、親にとってはものすごく勇気がいり、ハードルが高いことです。

クリスティンも、あとがきでこう書いています。

子どもを信頼して、自分の生きる道を自分で見つけさせるのは簡単なことではありません。とりわけ、子どもたちは決められた型に順応しなければならないと主張する専門家だらけの世の中ではなおさらです。誰もが自分の子どもには最良の機会を与えてやりたいと思うからこそ、彼らを 「正しい 」方向に導かなければ、とてつもなく悪いことをしたような気持ちになってしまう。

子どもの好きなこと、得意なことを修正しようとせずに褒めてやることは 、 (その得意分野がいわゆる将来的な成功とは結びつきにくい場合は特に )崖から飛び降りるほどの勇気を必要とします。少なくともわたしはそうでした。それでも子どもを本当に羽ばたかせるためには、信念と勇気を持たなくてはなりません。

 

将来、私の娘も、その環境でどうにもならない苦難に出会うこともあると思います。 

それを「頑張って乗り越えていこう」と励ますべきものなのか、そこにいてもマイナスだから環境を変えてしまうべきなのか。

日本では「学校に順応し通い続けること」「進学し就職すること」が「正しい」「普通の」人生とされていて、横並びであることがよしとされているので、その中で、子供のために何がいいかを都度見極めて決断していけるか、というのは今から課題だと思っています。

 

3.子どもが抱える困難の中身を知ろうとし、理解し、その改善のために共に戦うこと

ジェイクは、知能が高いことが注目されがちですが、自閉症による様々な困難を抱えています。クリスティンは、ジェイクにとって何が困難で、それをどう導けばよいかを徹底的に考え、実行します。

予定外の出来事によるパニックへの対処や、相手がどういう振る舞いについてどう思うか、社会的にふさわしい振る舞いについて教えることを根気強く続け、ジェイク自身が感覚的には触れることすらできないであろう、理解できないもの(人とのコミュニケーション方法)を言語化して伝えて理解させるようにしました。

 

4.子どもの可能性を諦めないこと。子供を信じること。強い信念。

自閉症の診断が出ても、何人もの第三者に「言葉が話せるようにはならない」と言われても、彼女は諦めませんでした。普通クラスに行くことも、大学でジェイクが学びたいことを学べるようにすることも。

 

 

この本を読んで思ったこと

クリスティンさんのように、子供に寄り添い、子供を信じ続けること。

シンプルなように見えて、とても難しく大切なことを改めて目の前に見せてくれたのが、この本でした。

来年には小学生になる娘、少しずつ自分の好きなこと、得意なことが決まっていくと思います。人間関係やさまざまなことで困難に出会うこともあるでしょう。

彼女が自立しながらも、必要なときにサポートをしてあげられる、そんな親でいたいなと改めて思いました。

忙しい日々の中、理想通りにできるわけでもなく簡単なことではないですが…(余裕がないとイライラすることも多いですしね、ついダメとか今はやらないでとか言っちゃうし!!思っていても難しい!!)

 

ドラマティックな展開に、一気に読ませられます。オススメです。 

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